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旧岡谷市役所庁舎 床暖用器具を発見 耐震化完了 見学会も計画
2024年12月21日
岡谷市が、国登録有形文化財の旧市役所庁舎で進めていた耐震補強工事が今月に完了した。併せて、施設内を1936年の完成当時の雰囲気に近づけるための復元作業も実施。更に、床下から発見した暖房用ラジエーターも、見学できるようにした。市は今後、市民を巻き込んだ保全活動を企画しながら、旧庁舎の新たな活用方法の検討を進めていく。
工事は5月に始め、予定通りの工期で完了。厚さ18センチのコンクリート製耐震壁を1階部分に4枚設置した。旧事務室には高さ、幅とも約5メートルの2枚、宿直室と用務員スペースだった2カ所には、それぞれ高さ約5メートル、幅約4メートルの壁を付けた。構造耐震指標は工事前の0・443から、国の基準値0・6を上回る0・694まで上がった。
工事では往時の姿の回復にも努めた。照明は蛍光灯からペンダントライトに変更し、床も緑色のリノリウムシートをはがして板張りの状態に復元。移設していた木造のカウンターも、完成当初の位置に戻した。耐震壁の塗装も、経年劣化した周囲の柱や壁の色味に近づけたという。
工事中には、床暖房用のラジエーター9基を発見。設置年は不明だが、完成時に設置していた場合は、官公庁の建物に導入された最初期のものになるという。市は現在、専門家に鑑定を依頼している。1基を残し、床の一部をガラス張りにして見学できる状態にした。
市は2036年の市制施行100周年に向け、旧庁舎の新たな活用方法を模索している。耐震化完了を契機に、来年度には一般向け見学会や市民に床の塗装、サッシの清掃などに協力してもらうワークショップも計画。市担当者は「旧庁舎への愛着を高めてもらいながら、保全についても考えてもらう機会をつくりたい」とする。
契約金額は耐震補強工事が6710万円、工事監理が325万6000円でそれぞれ岡谷組、諏訪総合設計が請け負った。うち6410万円は市債で賄い、700万円は旧庁舎保全基金から拠出した。
旧庁舎は鉄筋コンクリート造2階建ての延べ約1545平方メートル。製糸家の尾澤福太郎(1860〜1937年)が私費で建設し、36年4月の市制施行に合わせて寄贈した。87年まで庁舎、その後は2015年まで岡谷消防署として活用。現在は1階の一角に、おかや文化振興事業団の事務所がある。
(写真は、床から見つかった暖房用ラジエーター=手前=と耐震壁=奥=)