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「伝統的酒造り」無形文化遺産登録 諏訪・上伊那の業者からも喜びの声

2024年12月6日


 5日、日本酒や焼酎といった「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録された—とのニュースが駆け巡り、酒所の信州からも喜びの声が上がった。県酒造組合の宮坂直孝会長(諏訪市、宮坂醸造社長)はこの日、「私共の長年の夢が実現し、『やっと認められた』という非常にうれしい気持ち」などとするコメントを発表。「酒造りは、人間の持つ豊かな感性で微生物を育む『幸せな仕事』」と表現し、登録を機に世界で更に存在感が高まっていくことに期待感を示した。
 日本の酒造りは、「並行複発酵」というこうじ菌と酵母菌の力を巧みに操る唯一無二の複雑で繊細な技法を用いる。試行錯誤を重ねながら技術が確立された一方、近年は消費量が落ち込み、日本酒で見るとピークの1973年は170万キロリットルの国内出荷があったが、2023年には39万キロリットルまで減少している(農林水産省「日本酒をめぐる状況」から)。
 それだけに多くの酒蔵がある本紙関係の諏訪、上伊那地域からは喜びとともに、「これを話題に飲む機会にもつながっていけば」と期待する声も聞かれた。
 「神渡」醸造元の豊島屋(岡谷市本町)は、酒造りのピークを迎えており、くしくもこの日は「神渡 純米新酒無濾過(ろか)生原酒」の蔵出しと重なった。林慎太郎常務は「官民挙げてPRいただいたおかげ。感謝ですね」と受け止め
た。
 今でこそ海外への輸出もあるが、ここまで続けられたのは「地元の皆さんの応援のおかげ」。それだけに「次の時代に技術を伝承する責任を改めて強く感じる」と語った。
 「夜明け前」蔵元の小野酒造店(辰野町小野)の小野能正社長も「昔からのこうじを使った酒造りが国際的に評価され、うれしい」と語り、「海外市場で日本酒を知ってもらう弾みになる。いい追い風になると思う」と期待した。
(写真は、無形文化遺産登録決定の日も蔵人の酒造りは粛々と行われていた=5日、豊島屋で)