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旧矢﨑商店 立川流系の宮大工が建築 天井裏の棟札から1936年の建物と判明 国有形文化財要件満たすとの評価も下諏訪町

2024年11月2日


 下諏訪町は1日、移住交流総合拠点としての活用と、国の登録有形文化財への登録を目指している御田町の旧「矢﨑商店」について、諏訪大社下社秋宮を建築した立川流の流れをくんだ宮大工が、1936(昭和11)年に建てたことが分かったと明らかにした。戦時中の建物疎開を経て、洋風の正面部分は55(同30)年に増築したことも判明。町の歴史を刻んだ生糸問屋の商家としての価値も加わり、10月に現地視察した文化庁の調査官は「登録要件は十分に満たす」と評価した。
 町は本年度、建築史が専門の信州大学教授と学生、県建築士会「ヘリテージマネージャー協議会」と建築的価値などを調査している。建築年などは7月、2階の天井裏で棟札を見つけて分かった。加えた調査で、大工は同じ36年に来迎寺(横町木の下)の本堂を再建していたことから、宮大工と判明。建物は45(同20)年に建物疎開で一部を解体し、55年までは別の壁が付いていたことも分かった。
 「看板建築」としてきた洋風の外観は、ほかと比べて曲線を生かした立体的な構造で「看板建築とは言い難い、先進性ある意匠」と位置付ける。質の高い大工技術による近代和風建築と、当時の最新情報を取り入れた正面部分の融合が特徴で、信州大の梅干野成央(ほやのしげお)准教授は「近代から現代への時代の変わり目における、町の建築文化の展開の様相を伝える建物」と評価している。
 町は本年度中に登録有形文化財への登録申請をして審議を受け、早ければ来年の秋ころに登録の可否が分かる予定。結果を踏まえ来年度、保存活用の方針と改修の実施設計を作る。2028年度に改修、29年度中に活用を始める計画としている。
 この日、町議会全員協議会で報告した宮坂徹町長は「この建物のポテンシャルを最大限発揮できる活用を目指し、供用に向けて引き続き、事業を着実に進めていく」と話した。(写真は、建築年が分かる切っかけとなった棟札=町提供)