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八島湿原で外来種の侵入深刻に

2024年9月30日


 下諏訪町郊外の八島湿原で、外来生物の侵入が深刻だ。ヒメジョオンをはじめとする繁殖能力が高い外来種が増殖しており、1万2千年かけて育まれた豊かな生態系への被害が懸念される。関係者は「これまではせめぎ合いの状態だったが、年を追うごとに増えていく。このままでは危機的状況になる」と警鐘を鳴らす。
 八島ビジターセンター「あざみ館」職員によると、環境省の「生態系被害防止外来種」に指定されたヒメジョオンのほか、メマツヨイグサ、フロックスも増加傾向にある。ことし8月には、以前はヤナギランの群生地だった場所がほとんどヒメジョオンで埋め尽くされ、「断定はできないが、ヤナギランがヒメジョオンに負けてしまったかもしれない」と分析する。
 外来種が増える要因の一つは、訪れる人の靴や車のタイヤについた種。登山客に加えて観光客も多く、同センター職員は「外来植物を持ち込まないために靴裏の土を落とす」という登山のマナーを知らない人も多いのでは—と指摘する。
 毎年、下諏訪町を中心とした有志でつくる「八島高原を美しくする会」がヒメジョオンの除去をしているが、年1回では侵略スピードに追いつかないという。作業場所が入口付近や広場、駐車場のため、広い湿原の中ではびこる外来種には効果が薄いとみられる。
 時折、善意で木道脇のヒメジョオンを抜く一般の人がいるというが、同湿原は自然公園法における特別保護地域のため、外来種を含む全ての植物採集は禁止。除去には一定の手続きを踏む必要がある。同センター職員は「気持ちは分かるけれど、高山植物の採集と同じで法令違反に当たる」として注意を促す。
 「以前に比べてごみは減り、環境保護の意識は高まってくれている」と来訪者のマナー向上に感謝する同センター職員。それでも更なる環境保全は必要で、「入り口には土落としのマットが敷いてある。できるだけ気を遣ってくれると、侵略を遅らせられると思う」と協力を呼びかけている。
(写真は、大勢でにぎわう八島湿原=ことし8月)