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和田嶺合戦160年にちなみ西餅屋に焦点 下諏訪で今井邦子文学祭

2024年7月14日


 下諏訪町ゆかりのアララギ歌人、今井邦子(1890〜1948年)を顕彰する「今井邦子文学祭」が13日、今井邦子文学館で開かれた。幕末の1864(元治元)年に樋橋で起きた「和田嶺合戦(わだれいかっせん)」からことしで160年になることにちなみ、邦子の祖母がいたという和田峠の立場茶屋「西餅屋」と樋橋の歴史に焦点を当て、関連する短歌や随筆などを紹介しながら、邦子の文学を掘り下げた。
 町内外から約40人が来場。語りと朗読の会が邦子の童話「白露物語」を読み聞かせた後、町博物館協議委員の小松直人さん(樋橋在住)が「和田峠の今昔」と題して講演。邦子は18歳まで、湯田町の茶屋「松屋」(現・今井邦子文学館)で祖父母に育てられ、祖母よねの実家だった西餅屋の「竹屋」に、峠を「3時間くらい歩いて」(小松さん)よく遊びにいっていたという。
 17歳の時には半身不随だった祖母を連れて、湯治のため小県郡まで出掛けた—などのこぼれ話も披露。西餅屋には茶屋が4軒あり、名物の「力餅」を提供するなどで、旅人の憩いの場として栄えたが、和田嶺合戦の際に4軒とも焼失。その後、復元され、邦子の祖母がいた竹屋だけ残っていたが、1924(大正13)年には全てなくなったという。
 小松さんは皇女和宮が降嫁する際、休憩した樋橋本陣や1913(大正2)年に大火があった同地区の歴史も解説。語りと朗読の会が関連する邦子の随筆「和田峠の道」を朗読し、来場者は江戸の栄華の面影を今に伝える西餅屋や樋橋の歴史と、祖母と歩いた邦子の軌跡をたどった。
 文学祭は、邦子の命日(7月15日)に合わせて開かれていた「邦子忌」を顕彰事業に発展させて昨年度からスタート。開催に携わったあさかげ短歌会下諏訪支社の高木萬知江さんは「今井邦子と西餅屋」と題し、多感な少女時代を過ごした和田峠、祖母への思いを詠んだ「村をあげて町に移りし和田峠の餅屋の跡は杭(くい)にしるせり」などの短歌を紹介。歴史を知り、人を知り、文学を知ることの大切さを説いた。
(写真は、西餅屋や樋橋の歴史、邦子との関わりを話す小松さん)