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林正敏さん鳥類標本3000点展示 科博寄贈前に八ケ岳美術館で

2024年6月18日


 原村の八ケ岳美術館・歴史民俗資料館は7月7日(日)まで、「世紀を超えた鳥類標本の全容」と題した展示会を開いている。日本野鳥の会諏訪支部名誉支部長の林正敏さん(80)=岡谷市川岸東=が、45年間自宅で保管してきた約3000点の鳥類標本を国立科学博物館(茨城県つくば市)に一括寄贈する前に、地元の人に見てもらおうと企画。展示室に並んだ大小さまざま、膨大な量の鳥類標本が来館者の度肝を抜いている。
 標本3000点の内訳は、鳥類242種2391点、獣類12種59点、鳥卵550点。標本は一般展示用のはく製ではなく、学術研究用の仮はく製として丁寧な処理が施され、100年以上経過しても羽毛の色彩は色あせていない。「ほとんどの鳥が捕獲できた明治、大正期の標本。大半の種が現在は捕獲できない保護鳥で、二度と入手できない貴重なもの」という。
 林さんはこれらの標本を二つのルート、4人の関係者から寄贈を受け、自宅で保管してきた。一つは明治、大正期の農商務省時代に、主に鳥獣行政の一環として食性調査に役立てるため、鳥獣調査員の立場で鳥を捕獲した松本市の高山鼎二と子息の忠四朗、他方は上諏訪町長の傍ら高山チョウの研究者で諏訪湖の鳥類も調べていた金井汲治と、子息で戦後初の諏訪市長を務めた金井清の四氏(いずれも故人)。
 今展では全ての標本に加えて、高山標本と一緒に寄贈を受けて保管していた生物画家、小林重三(しげかず、1887〜1975年)の「信濃稀産鳥類」の軸画、鳥卵標本の製作道具なども展示している。
 展示を見た女性の一人は「100年以上前の標本がこんなにいい状態で保管されていることに驚いた。大型の鳥類は迫力があるし、展示の中に触ってもいい標本があるのがうれしい」と話していた。
 林さんは「自分自身もこんなにたくさんあったのかと驚いている。自宅に標本を保管するために暮らしが不便になっても最大限に配慮してきた」と振り返り、「寄贈が決まって本当に安心している。既にライチョウの研究が始まっているが、これからの研究は遺伝子解析の時代。これらの標本の役割は大きい」と話している。
 展示の関連イベントとして、22日(土)午後1時半から信州大学理学部諏訪臨湖実験所の笠原里恵助教の講演会「剥製とその遺伝子解析が教えてくれること」、7月4日(木)午後1時半から林さんの「はらむら塾講演『鳥学を支えた採集者たち・世紀を超えた鳥類標本を語る』」がある。いずれも参加費無料(入館料別途、要予約)。予約、問い合わせは同館(電0266・74・2701)へ。(写真は来館者に鳥類標本について説明する林さん=右=)