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全国で唯一「辰」の字がある辰野町 躍動の一年期す

2024年1月4日


 幕を開いた2024年は、辰野町に注目が集まる年だ。なぜなら、ことしの干支(えと)の「辰(たつ)」の字が全国の市町村で唯一名前に含まれるから。そんな希少な町名を持つことにあやかり、町は「辰年プロジェクト」と銘打った企画で地域を盛り上げていく計画で、竜のように「躍動の一年」となりそうだ。
 町教育委員会によると、地名の由来は明確でないが、辰(竜)にまつわる伝承や資料が残る。「辰野町資料(第22号)」掲載の伝承は、かつての大きな荒神山が天竜川をせき止めていて湖があり、一匹の竜が住んでいたとする。この湖はある時の大雨によって氾濫し、荒神山が崩れて湖がひき、竜も天へ昇ったことから辰野という地名になったと伝える。
 江戸時代後期の国学者松沢義章の著書「洲羽国考」にも、昔は荒神山や大城山の間に4キロ四方の湖「天ノ竜ノ海」があったとする記載がある。湖は浅くなって「竜沼(たつぬ)」と呼ばれる沼に変わり、やがて干潟となり、辰野という地名が残ったという。
 また、町の西側の山には長く弧を描くように延びた「竜ケ崎」と呼ばれる尾根もある。巨大な竜が横たわる姿に見え、「飛び立たずに町を見守っているよう」(町教委)。宮所にも地上に潜んでいる竜を意味する「蟠龍(ばんりゅう)」を山号に持つ池上寺がある。
 この山には「竜ケ崎城」という山城が建てられ、1545(天文14)年の甲斐(現山梨県)の武将武田信玄による福与城(箕輪町)攻めの際は信濃守護の小笠原長時が立てこもったとされる。主郭の跡地は麓から30分ほど歩くとたどり着き、伊那谷を一望できるスポットとなっている。
 このように昔から「辰」との関係がある地域だった辰野。県最南端の「天龍村」や北海道の「北竜町」など「龍」や「竜」の字が名前に含まれる自治体、町と名前の読みは同じでも平仮名の「たつの市」(兵庫県)はあるが、「辰」の字が入るのは町だけだ。町によると、かつては複数存在したが、市町村合併でなくなったという。
 辰年プロジェクトの一つとして計画するのは、前々回の辰年に当たる24年前の2000年に、町役場ロータリーに埋められたタイムカプセルの開封。時期は未定で現在検討している。20年11月7日付のたつの新聞によると、カプセルには小中学生や一般から募った手紙などを入れた。11月5日に埋設式が開かれ、集まった100人以上の住民が見守ったという。
(写真は、巨大な竜が横たわっているように見える「竜ケ崎」と呼ばれる尾根)