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民族共栄の願い響く 柳澤寿男さんが9年ぶり故郷で公演
2023年11月29日
紛争で分断した旧ユーゴスラビアの国々をつなぐ民族混成オーケストラ「バルカン室内管弦楽団」による「ワールドピースコンサート」諏訪公演が27日夜、下諏訪総合文化センターで開かれた。下諏訪町出身で同楽団の音楽監督を務める柳澤寿男さん(52)=東京都=が9年ぶりに故郷でタクトを振り、国や民族、宗教を超越した調べで、満場の約700人の聴衆を魅了した。
新型コロナウイルスの感染対策緩和に伴い、4年ぶりに約30人の全奏者による来日コンサートが実現。23日から30日(木)まで東京、京都などの6会場を巡る。諏訪公演では龍角散社長でフルート奏者の藤井隆太さんを迎えてのフルート協奏曲をはじめ、ドボルザークの「弦楽セレナーデ」ホ長調作品22、千夜一夜物語が題材のリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」作品35を披露。アンコールはバルカンの作曲家による独特な調べで締めくくり、拍手が鳴りやまなかった。
同楽団は2007年、ボスニアやコソボなどの民族紛争で分断した地域の民族共栄を願い、柳澤さんが設立。現在でも異民族間の交流が困難な地域がある中、6カ国楽団の首席奏者らが集まり、柳澤さんの指揮で音楽を紡いできた。
柳澤さんは曲の前に、こうした事情を聴衆に説明。コンサートマスターはマケドニア出身でアルバニア人のジャフェル・ジャフェリさんが務め、町内から来場した60歳代女性は、シェエラザードのバイオリンソロに「哀愁あふれる高音とテクニックに感動した。世界中から戦争や紛争がなくなればいいという願いが、全身に響いて伝わってきた」と話した。
柳澤さんは終演後、取材に応じ「パッションのあるコンサートだった。満員になり、人が集まることのうれしさ、楽しさ、重要性が改めて分かった。バルカンの人たちも会ってどんどん打ち解けていった。会うことの大切さを、これからも皆さんに伝えていきたい」と語り、信州での公演を来年以降も継続したい考えを示した。
(写真は、聴衆の拍手と声援に応える柳澤さん)