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国の分断 音楽で紡ぐ 柳澤寿男さんが向陽高で講演
2023年10月26日
下諏訪町出身の指揮者で、「バルカン室内管弦楽団」音楽監督の柳澤寿男さん(52)=東京都=が25日、下諏訪向陽高校で講演した。同校の呼びかけで実現し、音楽科を選択する1年生や教職員など約30人が聴講。紛争で国々が分裂した旧ユーゴスラビア内にあるコソボなどの暮らしや経験、国籍も民族も違う音楽家たちと同楽団で演奏活動をする思いなどを語った。
柳澤さんは11月27日(月)、同楽団の演奏会を総合文化センターで開く。同校は公演にちなみ、世界で活躍する町出身者の話を聞く機会をつくろうと講演を企画した。
講演で柳澤さんは、コソボで平均寿命が24歳であることや、病気でも十分に診てもらえなかったことなどを例に、途上国の現状を「日本の当たり前が当たり前ではない」と話した。紛争後で治安が悪く、軍人らが護衛する中で演奏会をしたことも伝えた。
「演奏中でも戦争になったら銃を持って敵を取る」と当初話していた、紛争で親族を亡くした楽団員が公演後、「人に優しく生きていく」と柳澤さんに謝罪したエピソードでは「うれしかった。音楽が彼の心を動かした」と振り返り、「オーケストラだけは民族や国、宗教など関係なくありたい」と、同楽団を設立したことに触れた。
「敵対する国民、民族と思っても会ってみたらいい人だった—とメンバーが感じられた」と音楽がつくり出した信頼関係に触れ、「地球に住んでいる人がみんな地球市民だったらいいのに」と発した仲間の思いで、同楽団の活動していることを話した。
最後に「バルカン室内管弦楽団が良いオーケストラと言われることが本当の戦後復興につながる」と抱負を話し、生徒たちには「常識が全然通用しない海外にぜひ行ってもらいたい」と語りかけた。
(写真は、バルカン半島の地図を示しながら講演する柳澤さん)