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壮大な神話劇に感動 オペラ「御柱」
2022年11月28日
1998年の初演からおんばしら年に再演を続け、ことしで5回目を迎えた創作オペラ「御柱」の公演(実行委員会、カノラホール主催、市民新聞グループなど後援)が27日、岡谷市の同ホールで行われた。主要キャストに、二期会など第一線で活躍するプロの声楽家や将来を嘱望される若手を配し、公募による市民合唱団や児童合唱団が参加。おんばしら年の締めくくりにふさわしく、高らかな木やりで始まり、最後は神々が4本の光の帯(御柱)となる輝かしい舞台が聴衆を魅了した。
「御柱」は、古事記や日本書紀、諏訪地方の各神社に伝わる故事を題材に、神話の時代の古代スワの覇権を巡る人間模様を描いた市民オペラ。フィナーレでは、スワの地を守るため神々が四つの御柱(みはしら)となって天に昇る壮大な物語を全2幕5景で描く。
脚本・作曲は中村透さん(2019年死去、元琉球大学名誉教授)。前回(16年)に続き音楽監督・指揮は山上純司さん、演出は島田道生さんが務め、管弦楽はフル編成のオーケストラから人数を絞った「オペラ御柱チェンバーオーケストラ」が担当した。コロナ下での練習は、前日のゲネプロ(総合リハーサル)まで合唱団はマスクを着用するなど、大きな制約を受けながらも、参加者の「協力一致」で舞台を作り上げた。
物語の進行に大きな役割を担う「村人」や「兵士」などに公募で集まった約人の市民合唱団、「里の子」や「風の精」としてカノラ少年少女合唱団の団員らが児童合唱や女声合唱で参加した。
今回は「幅広い世代の市民にオペラ制作に携わってもらうことでオペラへの関心を高め、次世代の音楽文化の担い手育成にもつなげたい」(同ホール)と、ワークショップを開いて初めて舞台幕を製作。色とりどりの布を使った幕は第2景に登場し、舞台に花を添えた。
舞台の上で繰り広げられる神話劇は、照明を効果的に使い、新たな試みとして背景のスクリーンに四季の諏訪湖をイメージした映像を映すなど工夫。幻想的な舞台に、オーケストラが奏でる強弱の効いた音楽、響き渡る歌声が、聴衆を物語の世界に引き込んだ。
会場には「御柱」を作曲した中村さんの夫人で、声楽家の玻名城律子さんも沖縄県那覇市から駆け付けた。初演時には村娘の一人として出演し、3回目まで公演に関わっていたという玻名城さんは、「合唱のエネルギーを感じて本当に感動した。夫もきっと喜んでいる」と、素晴らしい舞台を繰り広げた関係者を称賛した。
オペラ御柱実行委員会の林新一郎委員長は「来場した東京芸大の先生が『楽しかった』と言ってくれたのが全て。コロナ下の厳しい環境の中でやり遂げてくれたことに熱いものが込み上げてくる。
「もう一つの御柱」を文化資産としてこれからも継続していきたい」と話した。
(写真は壮大な神話世界の物語が聴衆を魅了したオペラ「御柱」)