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建築的価値に理解深め 市文化センター建設60周年

2022年10月11日

HP文化センター講演会

 諏訪市博物館は9日、市文化センター建設60周年記念講演会を第30回「すわ大昔フォーラム」として同センターで開いた。工学院大学総合研究所客員研究員で市文化財専門審議会委員の二村悟さんが「和風モダニズムの建築美・諏訪市文化センター」と題して話し、約40人が同センターの建築物としての価値に理解を深めた。
 同センターは、北澤工業(旧東洋バルブ)の福利厚生施設「北澤会館」として1962年に建設された。設計者は、伝統的な数奇屋建築を独自に近代化したことで知られる建築家の吉田五十八(1894〜1974年)。77年に市の所有となり、2014年に国登録有形文化財に登録された。
 二村さんは同センターについて、「吉田の和風表現の鉄筋コンクリート造建築では代表例であり、ほかとは異なる要素を持っている」とし、「吉田の個性や設計手法を知るには欠くことができない建築」と強調。更に、吉田が手がけたほとんど唯一の新築かつ現存例のない舞台建築であるとして、「研究者にとってはたまらない建物だ」と話した。
 玄関ホールを中心に左右で用途を分けた設計や、正方形の空間を45度に使って舞台を設けたことで広がりを持たせる工夫が凝らされていることなども説明。「吉田が文化センターの舞台にひときわ力を注いでいたことは資料からも明らか」とし、どんちょうのデザインを手がけた東山魁夷、杉山寧と共に、文化勲章受章者3人の共作である点からも「価値がある」と語った。
 講演後には、ホール内設備の紹介も行われた。
 (写真は、東山魁夷が手がけたどんちょうなど設備の説明)