NEWS
富岡の繰糸シーン忠実 大河ドラマ「青天を衝け」蚕糸博が技術指導
2021年10月9日
放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」。岡谷蚕糸博物館によると、17日(日)の第31話で同館が技術指導した繰糸のシーンが放映される。渋沢栄一らの尽力で開業した富岡製糸場(群馬県富岡市)で、工女らが糸を繰る場面。「世界で唯一、富岡でも使われた『フランス式繰糸機』を収蔵し、過去の文書を参考に研究者らを交え、当時の技術を再現させた岡谷だからこそできた協力」と同館。高林千幸館長は「忠実に再現された映像で当時の繰糸の様子を知り、放送後はぜひ実物を見に来館してもらえたら」と話す。
同館によると、6月にNHKから話があり、7月には来館したエキストラ15人に復元機を使って技術指導。8月の撮影はNHK放送センター(東京都渋谷区)で行われ、復元機を持ち込む際には蚕糸用機械製造・販売などのハラダ(長地小萩2)が協力した。この時、富岡の初代場長を務めた尾高惇忠の娘で第1号の工女となったゆう役の女優と、エキストラにも再び技術指導を行った。
指導役は、ここ10年ほどで技術の再現に取り組んできた同館学芸員の林久美子さん。6月にはゆうが使う上州式座繰り器の技術指導にも当たり、「演者の皆さんのうまくできた時の笑顔は、かつての工女さんが初めて上手に繰れた時に浮かべたであろう、うれしそうな顔と重なって見えた」と振り返る。
撮影では、監督の意向でより時代に忠実にするために繭は原種の「小石丸」を使ったという。改良が進んだ現在の品種より小振りで取れる糸の量も少なく、林さんは指導を通して「今よりも待っている時間がなくとにかく忙しい。繭を煮たり糸を足したりと、若い女性たちが頭を使いながらこんなに素晴らしい仕事で日本の近代化を支えたのかと思うと改めて感慨深かった」とする。
同館が大河ドラマの撮影で技術協力をするのは、2015年の「花燃ゆ」以来2度目という。
(写真は、復元機を使ってフランス式繰糸機を使った糸繰りを実演する林さんと高林館長)