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茅野市宮川高部で土石流 冠水や浸水被害64軒に倒壊や浸水

2021年9月7日

土石流
 上空の寒気や湿った空気の影響で、5日夕方から深夜にかけて茅野市宮川地区を中心に局地的に激しい雨が降り、高部区の下馬沢川上流では土石流災害が起きた。区内一部住宅に土砂が流れ込んだほか、火葬場・静香苑に通じる市道も崩れた。更に県道岡谷茅野線高部交差点近くの「下馬橋」では土砂が詰まって越水し、川の流れが変わり県道などが冠水。市災害対策本部によると、6日午後6時現在で区内で全壊8軒、半壊1軒、床下浸水38軒、床上浸水2軒の被害を確認した。
 県諏訪建設事務所によると、杖突峠付近の山腹で土石流が発生。それが下馬沢川を下流し、県道、河口付近の河川をふさいで氾濫を起こした。下馬沢川上流には2基のえん堤が設置されていたが、容量を超えたという。現場は市の土石流警戒区域に指定されていた。
 市本部は、県と長野地方気象台が午後7時40分に土砂災害警戒情報を発表したのを受け、午後7時45分に「避難指示」を高部と安国寺両区の459世帯1084人に発令。8カ所に避難所を開設し、最大54世帯114人が避難した。6日午後6時点も避難指示は継続している。
 災害の影響で、諏訪市神宮寺—高部東—宮川新井交差点付近の国道152号、県道岡谷茅野線、周辺市道が通行止めとなった。午後6時現在、国道は片側通行となったが、県道はきょう7日の開通を目指し土砂撤去作業を急ぐ。崩壊した市道開通予定は未定という。
 このほか、安国寺区のヨキトギ川と西茅野区でも浦ノ沢川が越水、14軒床下浸水し、ひばりケ丘ののり面崩落で1軒半壊した。市道の坂室アンダーパス、同上川通勤バイパスの江川橋アンダーパスなども通行止めとなったが、午後5時までに解除された。小中学校に被害はなく休校もないが、一部児童は登校できないためオンライン授業を受けている。
 市が杖突峠晴ケ峰に設置する観測局では、午後7時からの1時間に58ミリの激しい雨を観測。同建設事務所では当面の安全確保として、土石流を感知するワイヤセンサーの設置と、既設えん堤2基に流れ込んだ土砂撤去を検討している。
 災害から一夜明けた6日は、県、市関係機関と住民らが早朝から土砂撤去作業に追われた。近くの女性(70)は「バケツをひっくり返したような雨で、家の前の道路は激流となって外に出られず避難できなかった。家の周囲は泥がすごくてこれから片付けが大変になりそう」と心配そうに話した。
 市文化財指定の神長官守矢邸跡や、5月に完成したばかりの高部公民館も一部浸水。区長の男性(70)は「切ない。昨日から一睡もできない状態だった。過去に沢の上部で土砂災害はあったが、ここまでの被害が出たのは70年間生きてきて初めて」と疲れた表情で話していた。
 市中央公民館には最大で28世帯49人が避難。新型コロナウイルス感染症対策でテントを設置した。夫婦で避難した男性(74)は「家のことが心配で眠れなかった。情報が入らず困った」という。
 災害の影響で、諏訪南行政事務組合は静香苑を13日(月)まで臨時休業とした。建物に被害はない。6日に予約のあった火葬5件は岡谷市の火葬場・湖風苑に受け入れを依頼。復旧作業次第で再開日程に変更もあるという。市は、6日ときょう7日の市議会9月定例会一般質問を延期した。
 市は、きょう7日にも災害ボランティアセンターを茅野シティホール駐車場に設け、市内からボランティアを募集する。市対策本部長の今井敦市長は「これだけの災害となったが、住民は冷静に避難して人的被害がなくて何より。県と協力して復旧を急ぎたい」と話した。(写真は下馬沢川上流で起きた土砂災害の影響で静香苑に続く市道は崩れ、民家には土砂が流れ込んだ跡も=6日午前7時半ころ)