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貴重な戦前の作品も 武井武雄関連の寄贈・寄託増える
2020年11月18日
岡谷市出身の童画家・武井武雄の作品約600点が昨年度から本年度にかけて市に寄贈、寄託された。収蔵するイルフ童画館によると、武井とゆかりある作家のものも含めると700点に上り、年間の数としてはこれまでで最多。中には武井の東京の家や作品の預け先が、空襲で全て焼けてしまったことから貴重とされる戦前のものも。同館は19日(木)から「新コレクション展」として、武井が戦前に制作したとみられる16点をはじめ、新たに加わった収蔵作品の一部を公開する。
展示作家は武井のほか、絵雑誌「キンダーブック」(フレーベル館)などで同時期に活躍し、第2次の日本童画家協会立ち上げの主要メンバーでもあった林義雄、鈴木寿雄、黒崎義介ら7人。作品の総数は120点余り。
武井関係では、武井が息子2人と母を相次いで亡くす1938(昭和13)年まで使っていた「RRR」のサインが入った絵、版画など47点が初公開。「恐らく絵雑誌の原画ではないか」(同館学芸員)というネズミが餅つきをする様子を描いた絵は、擬人化やネズミのデザイン化された表情などから武井らしさが垣間見える。
同館学芸員は、寄贈や寄託が増えた背景を「所有している人が高齢となり、大事にしてくれる場所で後世へつなげてほしいと考えるようになったのではないか」と分析。所有者が死亡すると、遺族らに廃棄されてしまうこともあるといい、「そうなれば貴重な作品は二度と見られない。そういった意味でも寄贈はありがたく、寄せていただいた方の思いをつないで多くの方に作品を見ていただき、刺激にしてもらえたら」と期待する。
会期は来年1月19日(火)まで。水曜休館、開館時間は午前10時〜午後5時。問い合わせは同館(電24・3319)へ。
(写真は「RRR」のサインが入った戦前とみられる初公開作品。ネズミの擬人化やデザイン化された表情に武井らしさが見て取れる)