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龍渓硯の技術後世に 辰野美術館で講座
2019年7月25日
辰野美術館で24日、辰野名産の「龍渓石」を使った県伝統工芸品「龍渓硯(すずり)」の制作講座が始まった。10月の完成を目指し、定員いっぱいの10人が受講。書家で硯作家の泉石心(本名・逸男)さん(60)=伊那市=を講師に、初回は龍渓硯のいろはを学び、特注の「刀(とう)」を手に削り進めた。
龍渓硯は「黒雲母粘板岩」を原石とし、自然の形を生かし、鉄分によって生み出される表面の金色などが特徴という。泉さんは作家それぞれの硯の違いなどを紹介し、石の形によって墨をする「陸(おか)」、墨がたまる「海」の大きさを調整するよう勧めた。
受講者たちは好みの石を選ぶと、削る部分の輪郭を決め、長さ約30センチののみのような刀を鎖骨下のくぼみに当てて挑戦。ごりっと音を立て「瞬間的に下に押して」削る泉さんを手本に、慎重に刃を押し当てていった。
小中学校でボランティアに携わる男性(72)=小野=は、学区外の地域の歴史を知りたいと参加。「全体のバランスを見ながら少しずつ作って」との助言を受け「職人の世界とあって大変だが、興味のある水墨画で使えるよう頑張りたい」と励んでいた。
龍渓硯は江戸末期に川島で始まったとされ、現在は職人が少なくなり、存続が危惧されている。同館は「関心を寄せ、少しでも硯作りの楽しさを味わってもらえたら」と話した。(写真は、泉さん=左=に教わり刃で龍渓石を削る受講者たち)