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尖石縄文文化賞に西野雅人さん
2018年9月19日 茅野市の第19回「宮坂英弌(ふさかず)記念尖石縄文文化賞」の選考委員会(委員長・小林達雄国学院大名誉教授)は18日、本年度の受賞者を千葉市埋蔵文化財調査センター所長の西野雅人さん(56)=東京都江戸川区=とし、柳平千代一市長に答申した。研究成果を基に千葉県にある大貝塚「加曽利(かそり)貝塚」の総括報告書を編さんし、昨年10月の特別史跡指定に大きく貢献した点などを評価した。
同賞は茅野市出身の考古学者で尖石遺跡(同市豊平)の発掘、研究に情熱を注いだ宮坂英弌さん(1887〜1975年)の業績を記念し、縄文時代の研究に顕著な功績のあった団体・個人に贈られる。有識者6人でつくる選考委は8月24日に市長の諮問を受け、30歳代〜50歳代の候補者13人を審査した。
西野さんは千葉県柏市出身。明治大学1年の時に加曽利貝塚(千葉市)を見学、西広貝塚(同県市原市)の発掘に参加したのを機に貝塚の研究を始めた。同県教育委員会で埋蔵文化財の調査を長年にわたり担当し、2013年から千葉市埋蔵文化財調査センターに勤務。縄文人の生業や食の内容解明を進め、3分冊で1500ページを超える加曽利貝塚総括報告書(17年刊行)の編さんに当たった。
選考委によると、東京湾岸の貝塚を代表する加曽利貝塚は縄文時代中期〜晩期(約5千〜3千年前)に使われた。尖石遺跡では有機物が酸性の土壌で分解されてしまうが、貝塚では貝殻のカルシウム分が土壌をアルカリ性に保ち、埋葬された人骨や動物、魚の骨などが多く残されるため、縄文人の食生活の解明に極めて豊かな情報量を持つという。
小林委員長は「加曽利貝塚と尖石遺跡は海と山の民の異なる生業を示し、縄文文化の双璧をなす存在。西野さんの研究は尖石に比べて評価が遅れていた双璧の一つをもう一度クローズアップする一翼を担った」とした。
西野さんは「縄文文化の素晴らしさは、全国各地それぞれに魅力を生かして豊かな文化をつくったところにある。千葉県という地域に根ざした研究を評価していただき大変ありがたい」と喜びのコメントを出した。
授賞式は10月6日(土)午前10時半から茅野市尖石縄文考古館で。西野さんの記念講演もある。