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【山一林組製糸」の経営資料 創業家の蔵に多数

2018年6月26日

HP用・山一林組
「山一林組製糸」の経営資料
創業家の蔵に多数保管
市に初めて寄贈へ

 岡谷で五指に入るといわれた山一林組製糸の経営に関する資料が初めて、岡谷市に寄贈されることになった。中央町1に残る同社旧事務所向かいの創業者本宅の敷地内にある蔵に多数保管され、25日から運び出し作業がスタート。岡谷蚕糸博物館の髙林千幸館長は「経営状況はこれまで詳細が不明だった。つまびらかになれば、この時代の製糸業の状況も見えてくることが期待される」と話す。
 山一林組製糸は1879(明治12)年、林瀬平が創業。1921(大正10)年に建てられた旧事務所・守衛所は、経済産業省の「近代化産業遺産群」に認定され、現在は手織り製品の開発などを行う「岡谷絹工房」が利用する。27(昭和2)年には全国で初めて、工女の労働争議が起きたことでも知られる。
 現在は東京都内にいる本宅の所有者と定期借家契約を結び、敷地内の建物の保存と活用へ作業を進める一級建築士事務所・建設業のサイト(本町4)が、5月に蔵の中から資料の数々を発見。所有者に「この街の歴史を知る大切なもの。寄贈して皆さんに見てもらっては」などと提案し、了承されたという。
 元帳や金を借りた際の証書、生糸相場、手紙のほか、製糸工場の規模拡大で水が不足して築造された「丸山タンク」の使用料に関するもの、工場の図面など。こうした資料は廃棄されてしまうこともあるといい、髙林館長は「当時の製糸工場の経営状況や岡谷の製糸業を知る上で、非常に貴重」とする。
 資料の膨大さから、運び出すだけでも数日を要する見込み。まず整理してから一つ一つをひもとき、目録を作って博物館の収蔵庫で保管しながら公開を目指すという。サイト取締役の浜元氣さんは「資料から自分の住む街を知り、興味を持つことが街を更に好きになる切っ掛けになればいい」と期待する。
 
 写真=運び出しつつ、資料に目を通す髙林館長㊧やサイトの浜さん(ひだりから2人目)ら