NEWS

遺伝子組み換え繭から絹糸 宮坂製糸所が世界初の量産化

2017年12月12日

世界初遺伝子組み換え糸

 岡谷市郷田1の宮坂製糸所(宮坂照彦代表取締役)が、前橋市の農家で生産された遺伝子組み換え繭から絹糸を量産化させた。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によると民間での遺伝子組み換え繭、絹糸の量産化は共に世界初。11日、岡谷蚕糸博物館で同社などが会見し、専務取締役の高橋耕一さん(51)は「新たな付加価値が生まれたことで和服はもちろん、いろいろな使われ方がされることでもう一度、業界全体が盛り上がっていく切っ掛けにつながれば」などと語った。
 同社や農研機構によると、蚕が卵の段階でオワンクラゲが持つ緑色蛍光タンパク質を注入。繭や生糸は特殊な光を当てると蛍光を発し、繭や糸自体も淡い緑色になるという。これまでは研究室レベルだったが、ことし初めて前橋市の農家が176キロの繭を生産、それが冷凍状態で11月に同社へ持ち込まれた。
 現在、全国には4社の製糸工場があるが、この繭から繰糸できるのは同社のみ。背景にはタンパク質が熱変性に弱く、高温(およそ65度以上)での煮繭ができないことがあり、同社は現岡谷蚕糸博物館の場所にあった農業生物資源研究所から長年、技術指導を受けてきたことでそれを可能にした。
 176キロの遺伝子組み換え繭から取れる糸は24キロほど。全体の約14%に当たり、通常の繭の17、18%から比べると少なく、会見した農研機構職員は「繭自体もまだ通常のものと比べると小さい。これらの点は今後も品種改良をしていかなくてはならない」とした。
 今回は京都府の織物業者が繭を全量購入し、宮坂製糸所に依頼して繰糸。1月中には作業を終える予定で、その後は壁のクロスやカーテンなどインテリアとして商品化されるという。高橋さんは「養蚕から糸になるまで全て天然のものででき、環境負荷が少ない」と意義の大きさを強調した。
 岡谷市内では三沢区で今季、70キロの繭が生産されるなど養蚕再興の動きもある。岡谷蚕糸博物館の高林千幸館長(66)は「このような新規養蚕農家で将来的に遺伝子組み換え繭の生産が行われれば、繭から糸、製品化までを岡谷でやることが可能となり、岡谷ならではのブランド化にもつながる」と期待していた。

(写真は宮坂製糸所の繰糸の様子。繭、糸が共に淡い緑色)