NEWS

ハーモ美術館で藤田嗣治の新コレクション公開

2017年8月26日

藤田購入
　下諏訪町の諏訪湖畔にあるハーモ美術館（関たか子館長）は、エコール・ド・パリ（パリ派）を代表する日本人画家・藤田嗣治の油彩画１点を購入し、常設展の中で公開を始めた。同館の藤田コレクションは２点目。来年は藤田の没後50年の節目であり、注目を集めそうだ。
　コレクションに加えたのは、晩年の1955年制作の「la Cour（中庭にて）」（油彩、カンバス、35.０センチ×27.０センチ）。カンバスの裏側には、フランス語で「私の小さな妹、ミマスアイコヘ。1956年のパリの想（おも）い出として。愛をこめて　あなたの従兄、フジタより」のメモが添えられている。詳細は不明だが、制作の翌年、女優・三益愛子（1910〜1982年）へ贈った作品らしい。美術品専用のオークションで落札し、７月末に購入した。
　筆跡を感じさせない平たんな技法で、特徴的な輪郭線が描かれている。華やかなパリの表通りではなく、洗濯物が干されていたり、猫や鳥がいる建物に挟まれた小さな中庭。アンリ・ルソー（1844〜1910年）をはじめ、素朴派の作品を数多く収蔵するハーモ美術館では「モンマルトルなど、エコール・ド・パリの作家たちが暮らしていた当時の街の雰囲気がよく表現されていると思う。生活の匂いがするようだ」（関館長）と解説。藤田の作品の中でも素朴派に通じる題材に共感して、コレクションに加えたと述べた。
　藤田作品はほかに、1951年制作の水彩画「パリ風景」（38.２センチ×28.５センチ）がある。関館長は「素朴派や欧州で活躍した作家の作品を紹介するのが当館の使命。乳白色の独特な表現とは異なるが、藤田らしさが表れた作品。日本人としてフランスに渡り、今も高く評価されている作家の絵をぜひ鑑賞してほしい」と呼び掛けている。
　常設展の入館料は一般1000円、小中高校生500円（土曜日無料）。時間は午前9時〜午後6時。
（写真は、公開を始めた藤田の油絵「la Cour」）