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幻の尾形光琳を初公開 サンリツ服部美術館で
2023年11月16日
江戸時代中期に活躍した琳派の代表画家、尾形光琳(1658〜1716年)作の「夢中富士図」が、サンリツ服部美術館(諏訪市湖岸通り2)で開く特別企画展「描き継がれる日本の美」後期展示に初公開された。1956年に都内の茶会で使われた記録があるものの、長年、所在が不明になっていて、ほとんどの琳派研究者が実物を見ることがなかった「幻」の逸品という。
同作品(縦27.6センチ、横42センチ)は1699(元禄12)年の作。山頂が三つに割れた三峰型の富士が、簡略な筆遣いで描かれた。右には正月9日夜に見た夢の話で、西本願寺で江戸に入った夢で見た富士の話をし、御前で富士を描いた。しかし、これもまた夢だったという文章が記される。
光琳は1701(元禄14)年、44歳で宮中から法橋に叙任されている。「叙任以前の現存作品は少なく、それまでの光琳の書風や花押を知ることができる貴重な資料」と同館の藤生明日美学芸員は話す。同館で今月初めに講演した琳派研究の第一人者である東京大学名誉教授、河野元昭さんも「絶品」と高く評価、その後自身のブログでも「新発見といっても過言ではない」と発信している。
近年、寄贈を受けて同館が入手した。調べていく中で、1950年代から60年代に出版された光琳関係の書籍で、挿絵として掲載されていたものの、所在不明になっていた作品と分かった。
光琳作品を納めた箱と共に、同じく琳派の画家、鈴木其一(1796〜1858年)の「三保松原図」(縦25.5センチ、横40.4センチ)が結ばれていた。作品には「元禄12年卯月正月9日夜 富士夢想之画 光琳」と記され、箱の表には「富士夢想図」、ふた内側には其一の名がある。藤生学芸員は「富士山と三保松原は絵画でよく見る組み合わせ。其一はこの作品から刺激を受け、淡墨で描いたと見られる。この2作がセットになって150年伝わったと思われる」と話す。
両作品のほか、後期展示では渡辺始興の「花鳥図びょうぶ」(6曲1双)や俵屋宗達下絵、松花堂昭乗書の「槙下絵三十六歌仙和歌色紙」などが新たに紹介されている。期間は12月3日(日)まで。