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腐食で伐採「武居桜」姿変えても満開に
2023年4月6日
武居桜は残った—。下諏訪町の天然記念物で、苗代作りの目安として長年地域住民に親しまれてきた武居桜。下諏訪向陽高校の通学路ともなっている町道側に傾いて張り出した部分の幹が伐採され、腐食防止の金属に覆われた痛々しい姿に変わりつつ、残された枝がことしも満開の花を付けた。
1975年に町天然記念物に指定された樹齢300年を超えるエドヒガンザクラの古木。指定当時は高さ11メートル、幹周囲3.5メートル、枝の広がりは10メートル四方もあり、町道側に張り出した部分が満開時には花のアーチのようになって、通行する町民や向陽高校生らの目を楽しませていた。
木の傷みは長年の課題で、94年には樹木医の指導を受けて幹の腐った部分を削り取り、保護材で覆う大手術を実施。それでも衰えは止まらず、枯れた枝など木の一部が道路上に落下することもあった。裂けた幹を保護するベルトを巻いたり、ワイヤでつったりしていたが、崩れて町道側に倒れる心配もあったことから、「人命には代えられない」と昨秋、町が地元の要望を受けてやむを得ず伐採した。
木の姿は大きく変わったが、町道とは反対の山側に伸びた枝に希望を託し、町は天然記念物の指定を継続。木が「まだ生きているよ」と訴えるように、ことしも淡いピンク色の花を咲かせた。
近くに住む男性(79)=武居南=は、「季節を感じさせる美しい桜だったが、だんだん腐食して本当に残念だが道側が伐採された。それでも負けずに、ことしも立派に咲いてくれた」と地域住民を見守り続けてきた桜の生命力を称賛し、開花の継続に感謝した。(写真は、幹の伐採部分が金属で覆われ痛々しい姿。山側に伸びた枝は満開に)