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下諏訪宿本陣・岩波家住宅 県宝指定祝い式典
2023年3月19日
下諏訪宿本陣・岩波家住宅(横町・木の下)の県宝指定を受け、28代当主の岩波太佐衛門尚宏さん(51)は18日、指定を祝う式典と信州大学工学部建築学科教授の土本俊和研究室による研究成果発表会を同住宅で開いた。岩波当主は少なくとも220年の歴史がある建物を更に100年、200年先に伝えていくため、維持管理と活用の両立を目指したい考えで、今後の公開方法などを検討している。
諏訪湖周2市1町の理事者、観光関係者、各界代表など約50人が出席。岩波当主は、ことし1月に亡くなった母さち子さん(享年95歳)が、本陣の保護に生涯をささげたことに触れながら、新型コロナウイルス感染拡大で観光の在り方が変わる中、江戸時代に中山道と甲州街道の分岐点として栄えた下諏訪宿は、トレイル観光の面からも可能性があるとし、その中心の本陣を「最大限生かせる活動に専念したい」と述べた。
土本研究室の研究生4人が発表し、1801(享和元)年以前に主屋が建築され、近世に入ってからも本陣の風格を保ちながら、「生業(なりわい)と生活が一体となって保存されてきた。その歴史的価値は非常に高い」と幕末の61(文久元)年には、将軍家へ降嫁する道中、皇女和宮も宿泊した建物を評価。
全国各地の本陣の例を参考にしながら、飲食物販や主屋の横にある離れの座敷を活用し、宿札や宿帳、和歌などの模写の体験コーナー、修学旅行生の学習の場を設ける—などと利活用の提案を行った。
県文化財保護審議会委員でもある土本教授は、2019年8月から岩波家を調査。建築の専門家として岩波家の県宝指定は「ぜひとも成し遂げなくてはならないものと思っていた。全部で22回ほど調査し、庭園が1838天保9)年ごろに造られ始めたことが明らかになり、座敷もその前後にできたことが分かった。県宝指定はゴールではなくてスタート。これから維持管理や文化財としての価値を高め、文化や歴史を生かしたまちづくりに貢献していきたい」とあいさつ。
諏訪大社下社秋宮周辺の観光振興に向け、下諏訪宿の面影を残したグランドデザイン策定を進める宮坂徹町長は、「本陣を核とした下諏訪の歴史文化観光を、町としても推進していきたい。県と共に本陣の維持管理に関わり、支援していきたい」と述べた。
研究発表終了後には、主屋の座敷で抹茶と甘味の振る舞いがあり、参加者は雨にぬれた庭園を見ながら、本陣の歴史を体感した。(写真は、主屋の座席で抹茶の振る舞いを受ける参加者)