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なぜ諏訪湖から富士山が?不思議な現象に注目
2022年2月2日
空気が澄んで遠望が効くようになると、一層際立つ下諏訪町の諏訪湖畔からの富士山の眺め。山に囲まれた盆地の底から、なぜ約100㌔も先にある富士山がくっきり見えるのか。視界が広がる冬を迎え、NHKの人気テレビ番組「ブラタモリ」でも取り上げられた不思議な現象に、注目が集まっている。
この現象は、下諏訪観光協会ホームページの「特集記事」でも紹介されている。記事を監修した町博物館専門研究員の小口徹さんは、ブラタモリにも出演。小口さんによると、諏訪湖畔から富士山が見える現象は諏訪盆地の成り立ちとも関係している。
日本列島を形成する「中央」「糸魚川—静岡」の2大構造線が交わる諏訪は、糸静線を境に東側にはフィリピン海プレートから北西方向に押される圧力、西側にはユーラシアプレートから逆方向の圧力がかかり、荷重が最も強かった場所で中央構造線が左横ずれし、口を開けるようにして盆地ができた。
フィリピン海プレートの巨大な力によって盆地が形成される過程で、富士山や糸静線中部の約60㌔に及ぶ大きな溝地形なども誕生。山に囲まれたおわんの底のような場所から富士山が見えるのは、この諏訪盆地—溝地形—富士山が一直線に並んだ結果であり、「地学的には非常に稀有(けう)な現象によるもの」(小口さん)としている。
絶景ポイントの湖浜地籍(みずべ公園先の湖畔)は、国土交通省関東地方整備局の「関東の富士見100景」に選定。塩嶺御野立公園展望台(岡谷市)、霧ケ峰高原(諏訪市)、太郎山(上田市)など県内のほかの選定箇所が山の上であることを考えると、いかに貴重な存在かが分かる。
この地学的特徴が諏訪湖や温泉、縄文時代に北海道東部まで流通した良質な黒曜石などももたらしてきた。小口さんによると番組以降、興味を持って県外から訪ねて来る人も増えたという。「盆地の底から富士山が見える唯一の場所が、下諏訪町の諏訪湖畔だと思う」と話し、地球が丸い中で100㌔も先にある富士山が、何にも邪魔されずにくっきり見えるという事実に、地元住民ももっと関心を寄せてほしいと願っている。
(写真は、冬場になるとよりくっきり浮かび上がる湖浜地籍の富士山)