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渋沢栄一直筆の書 糸都岡谷に戻る
2021年10月23日
「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一(1840〜1931年)が揮毫(きごう)したとされる書が、岡谷蚕糸博物館に寄贈された。現在の旧オリンパス岡谷事業所跡地(岡谷市長地柴宮3)にあった丸九渡辺製糸場の事務所に飾られていたものが、諏訪市の個人宅に伝わり、所有者の平林一孝さん(72)=諏訪市=の厚意で再び岡谷に帰った。
書は額装で縦68㌢、横195㌢。渋沢の雅号「青淵(せいえん)」の名が書と落款で入り、論語の一節「思無邪(思いよこしま無し)」としたためられている。
平林さんによると、祖父のいとこが丸九渡辺製糸場に嫁ぎ、祖母がこの女性と懇意にしていた縁で、詳細は分からないが「引き取ってほしい」と話があった。当時、平林さんは小学校高学年くらいで、その後はずっと客間に飾ってあったという。
ことしのNHK大河ドラマで渋沢が取り上げられることを受け、「ただ家に置いていたら宝の持ち腐れ」と法光寺(諏訪市岡村)の小口秀孝住職(70)に相談。同寺で3月から一時保管・展示してもらい、更に住職の「渋沢も関わった製糸とゆかりの深い地に置いてもらうのが良いのでは」という助言にも後押しされて寄贈を決めた。
平林さんは「書を見た方に丸九のことを思い起こしてもらえたら」と期待し、小口住職も「絹の糸の縁で結ばれ、あるべき場所に落ち着いたのでは」と話す。同館では館内の「きぬのひろば」に飾る予定で、髙林千幸館長は「字は力強く、品格もある。書から渋沢の人格や、社会で果たした役割が感じられるよう皆さんに見てもらいたい」と感謝している。
(写真は、寄贈された書)