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あすなろ公園に元下諏訪町長・黒田新一郎さんの石碑
2019年4月29日
在野の人として、庶民の生活向上のために心血を注いだ元下諏訪町長、黒田新一郎さん(1897〜1981年)の生涯を記した石碑が、町体育館南側のあすなろ公園内に建立され、28日、関係者や黒田さんの遺族らが出席して除幕式があった。豊かさの中で、知る人が少なくなってきている「諏訪農民団事件」に光を当てた碑文が刻まれ農村における社会運動の先駆けだった活動を顕彰し、後世に伝えている。
事件は1930年に発生。世界恐慌のあおりなどで農産物や繭価が大暴落する中、黒田さんは農村救済を求めて立ち上がり、衆議院に窮状を訴える請願隊のリーダーだった。請願隊は上諏訪駅で全員検束されたが、時代に衝撃を与えた。
農民の生活改善のために尽くした活動は、58年から3期12年務めた町長の実績に比べて知られておらず、黒田さんの死去3カ月後の81年8月、同公園に建立された胸像にも詳しく記されていないことから、祖父が請願隊の副団長だった高木健治さん(東山田)と岩村清司さん(同)、郷土の歴史に詳しい宮坂源吉さん(同)が中心となって石碑建立会を設立して、2年ほど前から準備を進めてきた。
約千字の碑文は、農民運動を研究する九州大学名誉教授で福岡市博物館長の有馬学さんが監修。幅2・3㍍、高さ1・1㍍の砥川石に刻み、胸像の横に並べた。
約30人が出席した式では、黒田さんのひ孫に当たる柚子さん(13)と大勇君(9)、青木悟町長らが除幕。高木会長が「昭和初期から戦後の困窮困難な時代に献身的に活躍され、農業や産業などの発展に大きな功績を残した。足跡に更に光を当てて、後世に語り継いでいきたい」とあいさつした。
青木町長は、父親の健一さんが黒田さんから直接、町長の後継を託されたという逸話を披露しながら、「住民に寄り添いながら、住民福祉の向上のために尽くされた。庶民の生活を守る視点での行政運営の大切さを、改めて感じた」と感慨に浸りながら祝辞を寄せた。
三男の良夫さん(86)=久保海道=は、「ありがたいの一言」と石碑建立に感謝。「農民問題を政治問題にした功績が大きかった」と一貫して庶民のために働いた父親の姿を振り返っていた。
(写真は、除幕の後、石碑横で記念撮影する遺族(右側)や建立会関係者ら)