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鹿食害防止に「樹皮ネット」設置

2018年7月12日

180711樹皮ネット張り
 八ケ岳山域の関係自治体・団体で構成する南北八ケ岳保護管理運営協議会は11日、麦草峠周辺に生育する樹木をニホンジカの食害(樹皮剥がし)から守るため、被害に遭いやすいシラビソなど60本以上の木に「樹皮ネット」を設置した。協議会で行う初めての事業で、会員ら20人近くが参加、1本ずつ根元から幹にかけてネットを張り巡らせた。
 当初は昨年秋に予定していた作業だが、国道299号(通称・メルヘン街道)の冬季閉鎖が例年より早まったため、この日に持ち越していた。使用したネットは70センチ×2メートルのプラスチック製で、南信森林管理署から500枚近い提供を受けている。金網を使用する場合もあるが、他所でコケの植生に影響が出たことから、今回はプラスチックのものを使用した。
 会員たちは、信州大学農学部動物行動管理学研究室の竹田謙一准教授から効果的なネット設置の方法について話を聞き、3班に分かれ種を落とす木、被害が少ない木を中心に作業を行った。竹田准教授によると、県内では南アルプスの3千メートル級の山岳地帯でニホンジカを確認した例があり「2千メートル級の山には普通に生息している状態」という。
 主にシラビソをはじめコメツガ、トウヒ、ナナカマドなどの樹皮がかじられるそうで、「麦草峠は伊勢湾台風(1959年)で多くの倒木があり、周辺には若い木が多い。その樹皮が剥がされると生育に影響が出るのはもちろん、大きな災害だと再び倒木の被害が予想される」(竹田准教授)。
 会員で近くの麦草ヒュッテオーナー・島立正広さんは「このままでは確実に植生が変化する。現状を把握し10年先、100年先を見越した食害対策が必要だ」と話す。竹田准教授も「これまでにも鹿よけネット設置などの対策も講じているが、八ケ岳周辺となると面を囲う管理は限界がある。考えられる方法を組み合わせ、複合的に行うのが効果的ではないか」と指摘していた。(写真は「樹皮ネット」を設置する参加者たち)