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値段うなぎ上り「岡谷の味」ピンチ 稚魚激減で苦しい各店

2018年2月5日

うなぎ
 制定から20年が経過する「寒の土用丑(うし)の日」。10日(土)まで各店でキャンペーンが行われるなど岡谷市内のうなぎ店や川魚店は連日、客からの注文に追われる。にぎわう一方で、各店が頭を抱えるのがシラスウナギの不漁。昨年末ごろから仕入れ値が徐々に上がっているほか、夏には更に高騰する懸念もあり「これが続くようなら値上げは避けられない」など切実な声も聞かれる。
 市内のうなぎ、川魚店でつくる岡谷川魚組合(加盟6店)の浜守組合長(天竜町、浜丑)は「ウナギの仕入れ値は、毎週毎週上がっている」と話す。反面、ひいきにしてくれる客のことも考えると「上昇分をすぐに販売価格に転嫁することは現段階では考えられない」と苦しい事情を明かす。
 シラスウナギは、絶滅危惧種のニホンウナギの稚魚。市内川魚店の関係者は、今期の漁獲量は「前年の同時期と比べて100分の1程度と聞く」と現状を語る。「通常は5月ころまで取れるが、このまま不漁が続けば需要が増える夏には一気に価格が跳ね上がるのでは」と今後の動向を注視する。
 極度の不漁の中、業界の将来を考えて「資源を守ろう」という動きが市内で出てきた。同組合が1973年から、毎週第1土曜日に続けてきた統一のかば焼き特売日で、小松屋川魚店(本町)は初めて同日を休業することを決定。漁獲量が安定してくるまで続けるという。
 同店の小松善彦会長は、特売を始めた当時の組合長。「全体から見れば小さなことかもしれないが、目の前のことばかりでなく、更にその先も考えなくては」と語り、「こうした積み重ねが限られた資源を守り、ひいては業界を守ることにもつながるはず」とする。
 特売を始めた頃は、諏訪湖の汚染が社会問題化。ワカサギなど売れるものがない中で、養殖ウナギを使った打開策だった。定着した今は毎回、30分ほどで完売するというが、「何でも売ればいい時代ではない。無理をして中途半端なものを出せば岡谷のブランドを落とすことになる」。
 「寒の土用丑の日」が浸透し、今では冬場も消費量が増えたウナギだが、昔はうなぎ店がカツ丼や天丼を売って閑散期をしのいでいたという。現在は県外からもリピーターが訪れるほどになり、「岡谷のうなぎ」をより多くの人に楽しんでもらうためにも市内の関係者は今後の漁獲量の回復に望みをつなぐ。
(写真)県外にも定着した岡谷のうなぎ。稚魚の不漁で仕入れ値が上がり、経営を圧迫する