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尖石縄文文化賞に矢野健一さん

2017年9月21日

 縄文時代の研究に優れた業績を上げた団体・個人を表彰する茅野市の第18回「宮坂英弌(ふさかず)記念尖石縄文文化賞」の受賞者に、立命館大文学部教授の矢野健一さん(57)=京都市=が決まった。選考委員会(委員長・小林達雄国学院大名誉教授)が20日、柳平千代一市長に答申した。
 茅野市出身の考古学者で尖石遺跡の発掘、研究に情熱を注いだ宮坂英弌(1887〜1975年)の業績を記念した賞。選考委員会は8月30日に市長の諮問を受け、30〜70歳代の12人を対象に審査した。
 矢野さんは山口県下関市出身、京都大学文学部史学科卒。刻みを付けた鉛筆ほどの太さの棒を転がして文様を施す縄文早期の「押型文(おしがたもん)土器」を皮切りに、西日本の縄文土器型式の研究を進めた。
 緻密な土器編年を基に、土器の分布圏が広域的、流動的に変化することを指摘。小さな集落がネットワークをつくりながら社会を保っていた点を西日本の縄文社会の特徴とし、人の流れや広がりが弱まってきたと考える縄文後期以降の情勢が、弥生社会の定着性につながったと考察している。
 小林委員長(79)=東京=は「縄文文化は東高西低といわれ、遺跡が多い東日本の方が研究が活発だが、矢野さんは西日本の視点から縄文社会全体を視野に入れた研究で大きな成果を上げた」と評価した。
 矢野さんは「土器編年の研究は地道だが、縄文文化の研究で最も基礎となる部分で、貢献したいという気持ちで続けてきた。尖石という縄文研究の「メッカ」から尊敬する宮坂先生の名前を冠した賞を頂き、身に余る光栄」とコメントした。授賞式は10月7日(土)午前10時半から尖石縄文考古館で開かれる。