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「人斬り半次郎」太刀と 相楽総三の懐刀を展示へ 下諏訪宿本陣・岩波家で

2025年4月24日


 下諏訪町横町木の下にある県宝「下諏訪宿本陣・岩波家」で大型連休中の5月3(土=祝日)から5(月=祝日)までの3日間、幕末ロマンを想起させる「遺刀展」が開かれる。赤報隊長、相楽総三(1839〜68年)のものとして同家に伝わる懐刀と、西郷隆盛の側近、桐野利秋(38〜77年)が所持していたとされる太刀の2点を展示。新時代を切り開こうと奔走した「両雄が157年ぶりに再会する」として来場を呼びかけている。
 赤報隊は「年貢半減」を掲げて進軍。民衆の圧倒的な支持を受けたが、新政府から「偽官軍」の汚名を着せられ、68年3月、下諏訪(現在の魁塚の場所)で相楽ら幹部8人が処刑された。懐刀は刃渡り16センチ。本陣で捕縛された相楽が、当時の当主に託したものとの記録(当主日記)が残されているという。
 桐野の太刀は、歴史刀剣探究家の佐藤肇祐さん(50)=松本市=が所有。刃渡り68センチで、柄(つか)に納める茎(なかご)部分に、南北朝時代の「盛定(もりさだ)」の銘や、桐野が幕末まで名乗っていた中村半次郎が、12センチほど刀身を短くして佩刀(はいとう=帯刀)したと刻まれている。
 新撰組副長を務めた土方歳三ら、幕末の歴史に関わる刀数点をコレクションする佐藤さんがことし2月、刀剣収集家から譲り受けたもので、日本刀鑑定機関の鑑定書付き。桐野が「人斬り半次郎」として浪士らに恐れられていた時代に、上田藩士で軍学者の赤松小三郎を暗殺した際に使われた刀の可能性があるという。真剣のため透明なケースに入れて展示し、3日間とも佐藤さんが常駐して、刀の解説などを行う。
 佐藤さんは、町諏訪湖博物館・赤彦記念館で昨年度開かれた和田嶺(わだれい)合戦=樋橋戦争を顕彰する企画展「浪人塚160周年」(町主催)にも協力。刀剣収集を通して、新撰組や和田嶺合戦の後に、敦賀で斬首された水戸天狗党などを調べる過程で、幕末に歴史的な出来事が重なった下諏訪や相楽の存在を知り、その功績に改めて光を当てたい—と岩波家の現当主、岩波太佐衛門尚宏さん(53)と打ち合わせを重ねてきた。
 相楽は西郷隆盛の元に身を寄せていた時期があり、佐藤さんは「右腕だった桐野と会っていた可能性は十分にある」と推察。「相楽は幕末の混乱期の中で、新政府のために尽力したが闇に葬られた」と述べ、戊辰戦争で活躍しながら、最後は西南戦争で西郷と共に散った桐野を「相楽と似ている(似た境遇だ)。2人は義兄弟のようだ」と称した。
 中山道随一とされる本陣の庭は、これからツツジが見頃に。岩波さんは「刀と日本庭園は相性がいい。相楽総三を全国に知っていただくためにも、この企画を実施したい」と大勢の来場に期待した。
 開館時間は午前10時〜午後4時。入館料は一般800円、中学生以下400円。問い合わせは岩波家(電0266・28・7055)へ。
(写真は、遺刀展について語る佐藤さんと岩波さん。桐野の刀は反りが少ない形状。下が相楽の懐刀)